株式会社 エテルナ代表
竹内 馨
Kaoru Takeuchi
エテルナは、奥沢のイルンゴ、等々力のアンディアーモ、そしてベーネという、3つの異なるイタリア料理店を運営する会社です。イルンゴはお客様が気軽に立ち寄り、お酒と料理を楽しむオステリア。アンディアーモは等々力の閑静な住宅街に相応しい本格料理を提供するリストランテ。ベーネはオープンでカジュアルなトラットリアというように、それぞれの個性を持っています。
ただし、3店共通でこだわっているのが地域に愛され、その地の住民の皆さんが主賓となって、通ってくださるような場にしたいという思いです。世田谷区は文化・教養に恵まれた豊かな住民の皆さんによって、独特の品性を持つエリアとして歴史を積み重ねてきた土地です。そこに根づき、喜ばれ、愛されるお店を創ることができたなら、「食」に携わるプロとして本望ですし、世田谷を発信地として新しい日本の食文化を主張できるのではないかと思っています。
19歳で飲食の世界にホールスタッフとして飛び込んだ頃の私は、ただただ必死で成功を目指していましたが、ある時、あの某アミューズメント施設内のレストランで働いた時にカルチャーショックを受けました。訪れてくれるお客様にとにかく喜んでもらうことが仕事なのだ、という思想を植え込まれ、そういう気構えでお客様をお迎えしているうちに、お子様であろうと大人であろうと心から嬉しそうに笑顔を浮かべてくださることが私にとって最高のやりがいになったんです。
その後、都心部のイタリアンの店で、今アンディアーモにいる2人と出会い、同じ価値観の持ち主だと知り、意気投合したんです。評価も人気も高い大規模な繁盛店で働くことをやりがいに思う人間もいますが、私たち3人は違いました。もっとお客様の近くにいられる場で、そういうお客様一人ひとりのお好みも知り尽くした上で、料理とサービスでおもてなしをして、たくさんの常連さんに愛されるお店を持ちたい。そう思って独立をしました。
一方で、イタリアを訪れるたびに魅了されたのは、その食文化の豊かさでした。もちろん荘厳な高級店も素晴らしいのですが、なによりも感動させられたのは、どんなにひっそりとした住宅街に行っても、そこには必ず気のきいた小さなお店があったこと。住民の皆さんが程よくリラックスしてくつろぎ、楽しんでいる様子と、驚くほど味の良い料理に感動しました。
2013年に、最初に開いたイルンゴをオステリアとして始めたのもそうした感動を日本にも持ち込みたかったから。ベーネやアンディアーモもコンセプトは同じですが、それぞれに個性を持たせました。世田谷に住む多様なかたがたに喜んでもらえるように。そして、用途に応じて使い分けてももらえるように。
3店舗とも歩み始めたばかりのお店ですが、どこにでもある美味しいイタリアンで終わらせるつもりはありません。豊かな住宅街にナチュラルに溶け込んでいる居心地の良い美食の空間。それを確立して、人と街とに愛される料理店という文化を発信できればと思っています。
2020年のウイルス感染の出来事は、飲食業界に破壊的な打撃を与えました。でも、私は思ったんです。あのような事態になったとしても、地元に愛すべき料理店があったなら、そこが人々の不安をとりのぞき、幸せを再確認できる場になる、と。おかげさまでエテルナの3店舗も微力ながら食を通じて、世田谷の皆さんにほんの少しの元気を提供できたのではないかと思っています。地域に根づいた美味しいお店を通じて、多くの方の笑顔に支えられながら、喜びを感じたいと思っているかたがいれば、ぜひ一緒にこの新しいチャレンジに参加してください。